鼻出血は耳あかと並んで極めてよく見られる耳鼻科外来の「定番」です。今春も多くの患者さんが訪れましたので、また取りあげてみました。なかなか止血しない、などで困る話はよく聞きますが、止血法をよくわきまえれば問題なく、たとえ反復出血でも最終的にはレーザーを利用した止血で何とでもなりますから相談してください。
私の経験も含めて申しますと、鼻出血を繰り返す人は以下の傾向があります。
アレルギー性鼻炎のある人..特に子供はつい手が鼻孔にいき、結果、鼻内に小傷をつけ止血してもまたひっかくことで再出血するのでしょう。
季節の影響...季節の変わり目はアレルギー性鼻炎の症状が出やすい時期でもあります。
以上から軽い出血には抗アレルギー剤の服用でもコントロールできます。
止血の対策の大事なポイントは、何処から出血するか、を知ることです。見当違いの場所を押さえても止まりません。
鼻には左右に分ける鼻中隔(仕切り壁)があります。(図1)鼻出血の殆どはこの鼻中隔壁から出ます。...決まった場所なのでキーゼルバッハ氏の出血点と名称がついています。...×印
人差し指をグッと第一節まで鼻に突っ込んでみます。その時に指先端の辺りが×印....出血点です。いいですか、指腹の部分ではなくもっと奥です。(図2)
従って短い、小さい栓では巧く止血できません。(図3-a)。少なくとも小指二節位の長さの棒状の脱脂綿を深く隠れるまで挿入して小鼻の上方を押さえて下さい。(図3-b)この脱脂綿に止血剤を浸すと更に確実に止血できます。この後にしてはいけないことがあります。挿入した綿栓を短時間で抜去してはいけません。傷口にできかかっている「カサブタ」をしごき取ることになり、また出血します。少なくとも一時間位経ってからそっと抜去しましょう。
以上の処置を行っても反復する場合は先述のレーザー止血法で毛細血管を止血します。5~10分程の手技です。申し遅れましたが止血栓は脱脂綿を用い、テイッシュは極力避けましょう。粘膜を傷つけるおそれがあります。
本日は特別な鼻出血...例えば病気によるもの、血液疾患、癌、肝障害や薬の作用(脳梗塞、心筋梗塞の予防のために抗凝固剤服用中の方)の例は除いて「単純鼻出血」についてお話しました。