先日、皮膚科で扁桃摘出手術をすすめられている患者さんが訪れ 「私の扁桃腺は病巣感染になっているから手術した方が良いと言われましたが病巣感染とはどういうことか、いまいち良く判らないので耳鼻科の先生の意見を聞きたい」とおっしゃいます。患者さんの手を見ると酷い水虫の様に皮が剥けています。
扁桃手術については度々お話ししておりますが、病巣感染症については欠けておりました。
病巣感染症は扁桃摘出の根拠の一つでありますから少し詳しく述べてみます。
身体のある部分の慢性の感染症・・・例えば扁桃炎、虫歯、慢性中耳炎などがあると身体の離れた別の場所に二次的に病気が生ずることがあります。この場合、前者が軽いか無症状なのに反し、二次的に発病した病気の方が問題となることがあります。
例えば掌蹠膿胞症※、IgA腎症、リウマチ、胸肋鎖骨間骨化症などです。
(※掌蹠膿胞症・・手足の皮が水虫の様に剥ける病気)
前者を病巣感染と申します。前者を治療することにより、二次的に生じた後者の治療に良い影響をもたらします。
扁桃は前者の代表的なものです。
治療効果の説明として一時的感染の部分より菌の外毒素・炎症産物、などが直接、あるいはアレルギー的に二次的部分に作用すると考えられているのですが、詳細は不明の点が多いのです。
また、病巣感染が完治しても二次的疾病が治らぬ場合があります。
しかし臨床的には扁摘の効果については30~70%に良い結果をもたらすことは証明されていますから、病巣感染と二次疾病との関連が強く疑われる場合は充分な両者の経過観察のうえ手術も選択肢になります。