健康診断でどこも悪い所がないのに心の不調が原因で身体が巧く働かない病気があります。
例えば登校拒否症・・・朝、学校に行く時間になると熱が出たり、腹痛や嘔気に襲われて休むことになってしまう病気ですね。この症状は日曜・休日、あるいは昼を過ぎて学校へ行かずに済む時間になると症状が消えてしまいます。原因を調べてみると登校途中に吠えかかる犬が居る、いじめにあっている、担任が嫌いなど、ある程度原因の見当は絞れます。しかし注目すべき点は「病気のふりをして・・・周囲をだまして学校を休んでやろう」と計画して振舞うのではなく、無意識下に身体症状が起きる点です。
以前、皇后様が全く喋れなくなりCTなどを用いて脳・喉頭・発声筋群などを詳しく調べたましたが、特に機質的異常は無く「心因性失語症」の診断のもと、適切な治療で快癒されました。宮中の多忙なお仕事などのストレスが誘因か? と伝聞しております。
耳鼻科でも心の不調で病的身体症状が生ずるものに心因性難聴があります。学校で耳鼻咽喉科の検査には必ず聴力検査があり、難聴が疑われる児童の保護者には更に精密検査を勧める通知が行きます。
「※ここで聴力検査の結果を理解し易い様に説明しますと・・・厳密に申すと少々違うのですが・・・届けられた通知のデータを大筋、以下の如く理解して下さい。良く聞こえる耳(聴力損失0%・0デシベル)、正常の半分しか聞こえない耳(聴力損失50%・50デシベル)、全く聞こえない耳(同様に100%・100デシベル)と記入されます。通常30~40デシベルを超えると日常生活に支障が生じます ※」
私共の医院に「難聴」と指摘されて来院される患者さんの多くは難聴の原因を納得させる所見がありますが、中にははっきりした所見に乏しい方がいます。ここに至って「心因性難聴」を疑ってみる訳です。
小・中学児童に多いのですが・・・学校(いじめ)や家庭環境に起因することが殆どです。問診で「学校が楽しいですか」・・・「はい、楽しいです」のやり取りも親子を離して話を聞けば新しい事実が出てくるものです。
心因性難聴を疑うコツを挙げてみますと・・・
•聴力検査の結果は通常会話が不可能なほど悪いはずなのに、問診では良く聞こえ、会話が可能という矛盾
•繰り返し聴力検査すると正常になったり難聴になったり変動がある。
•静かに本人と1対1で話し合うと原因がわかってくる。
治療対策としてはクラス替え、転校、精神的支援などに期待出来ますが、時には何年もかかることもあります。
心の苦しみが身体的症状として表出される病気は沢山あります。旅行に行ったら便秘になったことありません? 旅行の緊張が腸の普段の動きを鈍らせているんですね。
これからストレスが益々増える世の中「心因性××」も増えるかも知れませんね。