皆さんに熱中症とは「どういうものですか?」と問うたら「よく解ってますよ今さら・・・」という声が聞こえそうですね。でも、改めて聞かれるとうまく答えられないでしょう。案外と正しい知識を欠いているので驚かされます。医学の世界でさえ熱射病・熱疲労・熱痙攣・日射病など、混乱していて近年やっと熱中症と統一されたのです。暑さでボーッとして気持ち悪くて吐きそう、フラフラする・・それは多彩な症状の一部で原因ではありません。
【熱中症の原因と症状を正しく理解しよう】
熱中症の引き金は猛暑と脱水=水分摂取不足です。暑い環境で汗がどんどん出て遂には体内の液体バランスが崩れ汗も出なくなり体温上昇、あるいは血液ドロドロに加えその成分の変化は脳をはじめ心・肝・腎・筋等の多くの体内臓器に不調を生じ・・・多臓器不全と申します・・・最悪の場合には死に至ります。特に中枢神経系の障害の軽・重が予後を左右するのでその見極めが肝要です。
熱中症の多彩な症状を挙げてみます。
ボーッとする・頭痛・判断力の低下・意識障害・倦怠感
大汗・発汗停止・痙攣・嘔吐・めまい・呼吸異常・
胸部苦悶・などと体液(血液)に現れる肝・腎などの異常
以上の様な症状を総合して重症度(Ⅰ~Ⅲ度)を決め治療指針としています。
しかし実際の現場での素人による重症度の判別は容易ではありません。あらぬことを口走ったりすれば明らかに中枢系の異常でⅢ度とみるべきでしょう。
重症度については文末に改めてコメントがあります。
【どんな人がどんな環境で熱中症になるか?】
最も多いのは日常生活の中で暑さを我慢して部屋で長時間過ごした結果、脱水症状に陥り発症する場合です。炎天下の屋外作業やスポーツなどでなることは意外と少ないし軽症で済むのです。
以上の条件に当てはまる人というとお年寄りです。しかも自宅で半日~数日かけてゆっくり発症することからしばしば発見が遅れ重症化します。お年寄りは我慢強く、節約を考えクーラー嫌いで、よりなり易いと考えられます。去年の全国の熱中症による死者は1700余人でこれは平年の4倍で、今年は更に増え3000人以上と予想されています。また、死者の80%は65歳以上のお年寄りです。重症度Ⅲ度の人の30%は救命できません。
【一般・素人の対応は?】
◎どんな予防対策が有効か?汗を多くかく時の水分補給につきます。
◎発症したら応急手当は?
1.涼しい所で休ませる
2.水、スポーツドリンク等を与える
3.全身を冷やす、濡れタオルで全身を包む、水をかける、霧をかける、風を当てる
4.素人は以上の処置以外はせず、救急施設へ早急に送る、何故なら体内に生じている異常までは知る手段がないから。
◎類似の症状の別の病気に留意しよう。
気温30度を超えると脳梗塞・心筋梗塞が増加すると言われています。時に重症熱中症と似た症状の意識障害、四肢のシビレ、胸内苦悶などを慎重に見守りましょう。
糖尿病のある人は低血糖などの発作を留意して処置をすすめましょう。
認知症はしばしば熱中症と間違い易いうえ、熱中症にもなり易いのです。
【コメント・・重症度に対する私の受けとめ方】
先に「原因と対応」にて触れましたが、重症度はⅠ~Ⅲ度に分類され・・・Ⅰ度:安静にて経過療養 Ⅱ度の一部とⅢ度は救急施設に送致と治療指針でも決まっておりますが、素人にはその微妙な違いが判りにくく、更に血・尿検査の結果も勘案しなければ正確な重症度は判定しにくいですから・・・。
私の本音では「熱中症を疑ったら応急処置後に全例に対して速やかに一般診療と簡単な血・尿の検査をすすめるのが安全だ」と思っております。