皆さん、しつこい咳で困った挙句耳鼻科を受診したことはありませんか? 内科に大分通ったが中々よくならないと訴え、耳鼻科では何とかならんでしょうかと申します。詳しく問うてみますと、内科の先生は一生懸命治療に工夫はされてはいるものの、てこずっていらっしゃるようなのです。
どういう咳かと申しますと、とにかく軽いきっかけでよく咳が出る。朝・昼・晩、少し強く息を吸い込んだ位で始まり、咳が咳を誘う感じでコンコン続いて困る。あんまり続くので電話の途中なら一度切って掛け直さねばならぬ、食事の後の咳では時に嘔吐しそうになってしまう・・・横隔膜の激しい上下動がその下の胃袋を揺するのでしょう。
更に特徴的なのは、こんな酷い咳が続くのに体調は概ね良く、熱、疲れ、だるさなど無く、咳さえ止まれば息切れもなく、多くは痰も少ない。(・・・乾性咳・カラ咳)
喘息患者のように咳が続くので「咳喘息」と呼ばれますが、喘息と違い、咳が治まればスッキリとします。喘息では発作が治まっても非常に息苦しくヒューヒューと喘鳴が残り、しばらくは半座位で休まねばなりません。これは、喘息発作の際には気道内に浮腫、痙攣、分泌液が生じて気道が狭くなっていることによるのです。
一方「咳喘息」では何らかの原因で気道内の刺激過敏性が高まっているから咳が出ます。少しの刺激でもムズムズとして・・・丁度、手足のマメが破れたところへ息を吹き掛けるとヒリつきますね、そんな感じでしょうか。気道のトンネル表面を出入りする空気流が刺激するのです。従って通る空気がよく暖められ充分な湿気を含んでくると(刺激的でなくなると)咳は治まり、狭窄はありませんから、直ぐ呼吸も楽になります。
では、気道の過敏性が何故高まるのでしょうか? 最近の研究によるとどうもアレルギーが関係しているらしいことが判って参りました。従って抗生剤は効かないのです。いくつかのタイプに分かれ、組み合わせはそれぞれですが主役は抗アレルギー剤、ステロイド等の適宜使用により軽快してきます。
アレルギー体質と言われた人がかかり易いとはっきり判明している訳ではありませんが、私の個人的印象として関係は深いようです。例えば、近年花粉症になった方が「咳喘息」を起こしたりします。また、不適当な治療を続けると10~30%気管支喘息に移行するとも言われています。
長びく咳は他に眼を転ずれば・・・肺炎(急性・慢性)・百日咳・種々の肺感染症・肺癌等数多くあり、それらを広く視野に入れた診療が必要です。素人判断は危険です。
おわりに耳鼻科領域で「長びく咳」を生ずる疾病では、喉頭周囲の炎症、浮腫、異物あるいは主気管・食道の周辺の異常を注意します。特別な疾病としては、副鼻腔炎による後鼻漏と気管支炎のセットによる慢性の咳があります。
よくある質問
- 長びく咳(咳喘息)
診療科目
耳鼻咽喉科、小児耳鼻咽喉科、気管食道科、アレルギー科
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