年をとって大声でないと通じない。テレビの音を大きくして家人に注意される・・・いやですねえ・・・。そこで補聴器によって昔のように「よく聞こえる耳」を取り戻そう・・・とするが・・・さて、安くもない補聴器を買って実際に使用してみると、期待した程会話が理解できずウルサイばかり・・・で・・・せっかく買った、あるいは子供達に贈ってもらった補聴器はお蔵入り、宝の持ち腐れとなる。以上がよくある補聴器の運命ではないでしょうか。どうしてこのような結末になるのか?
それは以下の理由によるのです。聴覚の神経は年とともに感度が落ちます。これは5本の指に例えますと、指が段々短くなるようなものです。補聴器はこの指に人工指をつぎ足して昔の長さに戻す・・・以前の音の感度に上げる・・・役目をする訳です。ここからが今回の話の重大ポイントですからしっかり理解してください。年をとると音を感じる神経が鈍くなる・・・指が短くなるだけではないのです。忘れてはならないことは神経の数(指の数)そのものも減少してきます。神経の数が減ると(指が5本→1本になると)音は感じるが音の形が判らなくなります・・・ね、わかりますか?5本の指でつかめば物の形が丸いか四角か判りますが、1本では物の存在は判っても形は判りませんでしょう。具体的に申せば「寿司」と「煤(スス)」、「柿(かき)」と「茎(くき)」、「尻(しり)」と「すり」の区別がつきません。極端な場合はどの音も同じ雑音になってしまいます。補聴器は「音も大きく、聞きやすくする能力」はありますが、減った神経を増やしてはくれません。言い替えれば「音の区別能力」を補ってはくれません。ここに補聴器の限界があります。それでは補聴器とどう付き合えばよいでしょうか。以下にコツを挙げてみます。
◎我慢して使い続け、早く慣れることです。これしかありません。相手の表情、口もと、目をよく見て言葉を理解する努力が必要です。80歳代ですと使いこなすには半年から一年はかかります。とにかく補聴器を着ければ「音は入って来る」のですから!!諦めず折に触れ使ってみましょう。
◎「老人の頑固」を捨て補聴器をすすめてくれる人の言葉に耳を傾けることです。「私は現在のままで何の不便も感じません」など言い張らないこと。あなたの難聴で「周囲の人が不便・迷惑」を受けているのですから。「つながらない会話」がいつの間にあなたを孤独の場に置き去りにしますよ。
補聴器はその効用と限界を知って使えば大いに役立つ道具です。現実に多くの方々が利用しています。うまく使いこなしてより幅の広い、楽しい日常を送りましょう。